『りんごの子守唄』
1959年。ビ−トルズが結成された年に、ぼくは生まれた。
そして、1970年。「さぁ、ビ−トルズを聴こう」とする年、彼らは解散してしまう。
思春期のぼくは、途方に暮れた。夢中になるべき対象が、死んでしまったからだ。
何故、10年早く生まれなかったのか。本気で自分の運命を呪った。
でも、だからこそ。ぼくはビ−トルズに夢中になった。
幾度も幾度も、耳を傾ける。残されたビ−トルズ音源の、すべてに耳を傾ける。深く深く。
ぼくが出来ることは、ただひとつ。それだけ。
でも、その時間、その行為は、月日と共に、特別なものとなってゆく。そして、何時しかビ−トルズは、ぼくの信仰のようなものとなる。ビートルズを信じることで生きてゆける。本気でそう思い、大人になった。ビ−トルズの歌はすべて、讃美歌。
そして、すべての人にとっての子守唄だ。眠れぬ夜も、彼らの歌があれば大丈夫。
だから、今回の企画の話しを聞いた時、自分の襟を正した。
本気で、大人も子供も聴ける「夢のビ−トルズ・ララバイ集」を目指そう、そう決めた。
10人の歌姫たちには直接、電話した。「特別なアルバムにしよう…」と。
製作中、スタジオに笑顔は途切れず、深淵な時間が流れた。楽曲のアレンジは、最少限に止められ、柔らかなアコースティック楽器郡が、歌をそっとそっと包み込んだ。その吐息は、どの楽曲でも不思議と同じトーンを持ち、アルバムを貫いた。
ぼくには、それがとても心地よく、興味深かった。
是非、歌姫たちの素敵なト−ン、それぞれ、じっくり味わって頂きたい。このアルバムで、ほっとして、ぐっと来て、安らかに眠って欲しい。ビ−トルズを、もっともっと好きになって欲しい。
ぼくの願いは、ただひとつ。それだけ。
こんなアルバムが、ぼくは、ずっとずっと作りたかったんです。『りんごの子守唄』。お楽しみください。「Good
Night!」。

鈴木惣一朗(ワールドスタンダード)