「僕はリアルタイムでビートルズの解散を経験したわけだけど、僕にとってビートルズはそこからまた広がりを持ち始めた。それぞれのソロを追っていく楽しみ。みんな好き勝手にやってるようで、どこかでビートルズを意識してるんだよ。つまり、ビートルズは1/4ずつになったわけじゃなくて、4倍になった。そうやって、ビートルズは解散後もずっと生き続けてるんだと思う」
4人それぞれが自分のソロを通じて伝えてくれたビートルズへの想い。それを丁寧に拾って構成された本作は、二重の意味でビートルズへのラヴレターになっているわけだ。また、アルバム全体のアレンジがシリーズ中もっともミニマムでクワイエットなのは、「歌声が交わる瞬間がもっともカラフルだから」。その瞬間を際立たせるための演出らしく、なんだか聖歌集みたいな雰囲気がある。静かに耳をそばだてて聴いていると、ぽつんと小さな灯りが胸の奥にともるようでもあり、そのほのかな灯りの温度さえ感じられるアルバムだ。だからこそ、ラスト・ナンバー『ハッピー・クリスマス』の「War Is Over」というシンプルなフレーズに、ビートルズが伝えようとした大きな愛の力を素直に感じることができるんだと思う。つまり、りんごをふたつに割るとそこにハートマークが生まれるように、このアルバムのどこを切ってもハートマークでいっぱいなのだ。
ジョン・レノン『ジョンの魂』(70年)から。湯川は『赤盤』でもジョンの曲「ビコーズ」をカヴァーしていたが、「Look At Me」はもともと彼女が好きな曲だったらしい。お相手を務めるのは、本作で続けてジョンのカヴァーとなる曽我部恵一。それぞれにリスペクトしあう二人の初共演であり、これまでありそうになかった豪華な組み合わせだ。鈴木惣一朗によれば「ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンスブールのデュエットの雰囲気もちょっと入れてみた」らしく、繊細さのなかに仄かな色香が漂っている。